【5】反逆する細胞

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土屋がコーヒーを淹れて配る。 会釈して受け取るラブ。 (うまくブロックしてるわね、さすが) 土屋の心理は全く読めなかった。 「外務省事務次官の林真介が…最初の被害者。次にJAPAN-TV 報道部の角川森一、そして不倫相手のキャスター石原香代。この繋がりは?」 「戸澤と桐谷が調べても、な〜んにも出なかったのよね〜。最初っから謎なのよ、参るわ〜」 咲なりのラブへの振りである。 (了解) 「爆死させられて、何も出ない事が、余りにも不自然。それが答えよ、咲さん」 「桐谷さん、そろそろ始めましょうか」 ラブのこれを待っていた桐谷。 「何なのよ、何始めるつもり?」 「私の様な諜報機関にいた者は、自然と習性ってのが身についてしまうのよね。例えば今も、私は刑事課の監視カメラの死角にいる」 淳一や咲が、幾つかあるカメラを確かめた。 「確かに映らないですね」 昴が3つあるカメラ映像をモニターに出した。 桐谷の姿はない。 それと… 「そうよね、久宝さん?」 「えっ?わたしですか?」 確かに映っていない。 「たまたまですよ、私なんかそんなこと考えてもいませんから」 「考えていなくても、出来てるのがプロなのよ。土屋さんに、飲み物の合図を出すのも何回目かしら」 「桐谷、どう言うことなの?仲間を疑うのは許さないわよ?」 ここで、ラブが動く。 「咲さん、桐谷さんは、2人を仲間だと思ってるわ。私もね。まずは…外務省事務次官の林真介は、新龍会の動き…と言うか、神林尚人の動きを探っていました。角川を利用してね」 「話が…見えないんだけど💧」 「でも…しくじった。愛人の石原に、うっかり喋ってしまった。彼女が、神林のスパイだとも知らずに。アイ、お願い」 モニターに、ビルに入って行く谷原が映る。 「あれは…国交省の谷原大臣だが…彼が何か?」 富士本が食いつく。 「このビルは、日本橋にある『中央警備』と書かれたビル。ですが、警備会社として登録されておらず、警備対象もない架空の会社です」 「そしてこれは、その2週間ほど前です」 アイが告げる。 そこには、ビルに入って行く外務省事務次官の林真介が映っていた。 「まさか…この2人は、機密警察って奴か?」 「さすが勘の鋭い戸澤さん。ですよね…久宝さん?…そして土屋さん?」 真剣そのもののトーン。 「何⁉️」 当然の戸澤の反応。 「アイ」 ラブの指示で、アイが告げる。 「これは、つい最近のものです」 そのビルに入って行く土屋。 別の日には久宝まで。 「どう言うことなの?」 「神林が言っていたが…先日、防衛省を襲撃した長澤宏美も、元機密警察の1人で、新龍会も一度やられたと…あの目はそう言う事か⁉️」 長澤宏美に殺されかけた戸澤を救った神林。 それは、復讐でもあった。 戸澤の鋭い目が、妻の土屋を見る。 無言の土屋。 それが答えであった。 「私は、機密警察を問題視してはいません。どこの国にも、影で支える諜報機関があり、過酷な任務に就いています。今は、この対策本部と私に協力して貰えないでしょうか?あの神林を止めるために❗️」 黙って目を合わせる土屋と久宝。 「機密警察については調査済みです。元首相の鷲崎(わしざき)さんから、聞いていますので。初代長官は、警視総監を長く務めた風井(かざい) 英正(ひでまさ)。そして、亡くなった外務省事務次官の林真介へと代わり、現在は谷原大臣がその長だということも」 「マジか…」(淳一) 「そんなことが…」(富士本、咲) 「驚いたなこりゃ」(豊川) 「香織…お前」(戸澤) 「土屋さん、久宝さん、神林は甲斐が作る人工臓器の移植を、世界に広めようとしています。しかし、あの臓器には欠陥があるんです。まだ今なら止められます。力を貸してください」 ラブが、深く頭を下げた。 「土屋、久宝、私達には、人々の生活を守る義務がある。今協力しないなら、あなた達2人には抜けてもらうわ」 暫し、沈黙の時が流れた。
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