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土屋がコーヒーを淹れて配る。
会釈して受け取るラブ。
(うまくブロックしてるわね、さすが)
土屋の心理は全く読めなかった。
「外務省事務次官の林真介が…最初の被害者。次にJAPAN-TV 報道部の角川森一、そして不倫相手のキャスター石原香代。この繋がりは?」
「戸澤と桐谷が調べても、な〜んにも出なかったのよね〜。最初っから謎なのよ、参るわ〜」
咲なりのラブへの振りである。
(了解)
「爆死させられて、何も出ない事が、余りにも不自然。それが答えよ、咲さん」
「桐谷さん、そろそろ始めましょうか」
ラブのこれを待っていた桐谷。
「何なのよ、何始めるつもり?」
「私の様な諜報機関にいた者は、自然と習性ってのが身についてしまうのよね。例えば今も、私は刑事課の監視カメラの死角にいる」
淳一や咲が、幾つかあるカメラを確かめた。
「確かに映らないですね」
昴が3つあるカメラ映像をモニターに出した。
桐谷の姿はない。
それと…
「そうよね、久宝さん?」
「えっ?わたしですか?」
確かに映っていない。
「たまたまですよ、私なんかそんなこと考えてもいませんから」
「考えていなくても、出来てるのがプロなのよ。土屋さんに、飲み物の合図を出すのも何回目かしら」
「桐谷、どう言うことなの?仲間を疑うのは許さないわよ?」
ここで、ラブが動く。
「咲さん、桐谷さんは、2人を仲間だと思ってるわ。私もね。まずは…外務省事務次官の林真介は、新龍会の動き…と言うか、神林尚人の動きを探っていました。角川を利用してね」
「話が…見えないんだけど💧」
「でも…しくじった。愛人の石原に、うっかり喋ってしまった。彼女が、神林のスパイだとも知らずに。アイ、お願い」
モニターに、ビルに入って行く谷原が映る。
「あれは…国交省の谷原大臣だが…彼が何か?」
富士本が食いつく。
「このビルは、日本橋にある『中央警備』と書かれたビル。ですが、警備会社として登録されておらず、警備対象もない架空の会社です」
「そしてこれは、その2週間ほど前です」
アイが告げる。
そこには、ビルに入って行く外務省事務次官の林真介が映っていた。
「まさか…この2人は、機密警察って奴か?」
「さすが勘の鋭い戸澤さん。ですよね…久宝さん?…そして土屋さん?」
真剣そのもののトーン。
「何⁉️」
当然の戸澤の反応。
「アイ」
ラブの指示で、アイが告げる。
「これは、つい最近のものです」
そのビルに入って行く土屋。
別の日には久宝まで。
「どう言うことなの?」
「神林が言っていたが…先日、防衛省を襲撃した長澤宏美も、元機密警察の1人で、新龍会も一度やられたと…あの目はそう言う事か⁉️」
長澤宏美に殺されかけた戸澤を救った神林。
それは、復讐でもあった。
戸澤の鋭い目が、妻の土屋を見る。
無言の土屋。
それが答えであった。
「私は、機密警察を問題視してはいません。どこの国にも、影で支える諜報機関があり、過酷な任務に就いています。今は、この対策本部と私に協力して貰えないでしょうか?あの神林を止めるために❗️」
黙って目を合わせる土屋と久宝。
「機密警察については調査済みです。元首相の鷲崎さんから、聞いていますので。初代長官は、警視総監を長く務めた風井 英正。そして、亡くなった外務省事務次官の林真介へと代わり、現在は谷原大臣がその長だということも」
「マジか…」(淳一)
「そんなことが…」(富士本、咲)
「驚いたなこりゃ」(豊川)
「香織…お前」(戸澤)
「土屋さん、久宝さん、神林は甲斐が作る人工臓器の移植を、世界に広めようとしています。しかし、あの臓器には欠陥があるんです。まだ今なら止められます。力を貸してください」
ラブが、深く頭を下げた。
「土屋、久宝、私達には、人々の生活を守る義務がある。今協力しないなら、あなた達2人には抜けてもらうわ」
暫し、沈黙の時が流れた。
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