【5】反逆する細胞

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目を見合わせて、大きく一呼吸した2人。 その意を決し、久宝が口を開いた。 「組織については言えませんが、臓器売買に日本が関与していることを上から伝えられて、調査をしています。殺害されたJAPAN-TVの角川さんは、情報屋的な存在でした」 「実在したとはな…」 戸澤が土屋を見る。 「土屋さんは、何人かの要人秘書を務めながら、監視役をしていた頃がありましたが、山手線の事件以降、ここに入るに至って、組織を抜けています。あのビルに寄ったのは、私が動いてるのを知り、情報を得ようとしたものです」 「勝手な動きで、不信感を抱かせてしまって、すみません。そこで知ったのは、高嶺宗治と側近の相葉が、新龍会の密輸に手を貸して、多額の金を手にしていたことと、新龍会を通じて、各国の貿易関連会社と、契約を取り付けていたということです。ただ…その確たる証拠はまだ得られていません」 夫である戸澤の顔を伺いつつ、土屋が述べた。 「相手が相手だけに、下手に動くと、外交や貿易問題に発展するかもってわけね」 意外とさらりと受け入れた咲。 ラブがいるからこそである。 「そちらの方面は、私が探ってみます」 その意図を汲んで、ラブが引き受けた。 「しかし…だとすると、今の高嶺社の立場は危ういのではないでしょうか?」 紗夜が言う通り、高嶺真純は真面目な人物が定評であり、不正や違反行為を行うはずはない。 「確かに真純社長は、例えどんな圧力があっても、権力に屈する人物ではねぇな」 「かと言って相葉も死んだ今、その後がいないから、殺してしまうわけにはいかないわね」 いつもの戸澤と土屋に戻った。 富士本と咲、紗夜がホッとする。 そこへ珍客?…が来た。 「皆さんお揃いのところ、邪魔するぜ」 「(じん)⁉️ 何であなたが来るのよ?」 「おぅ咲、ラブさんに呼ばれてな」 「ラブさんが?」 関東、関西を取り仕切る飛鳥組。 その組長、飛鳥(あすか) (じん)。 ここ警視庁対策本部刑事課では、もう顔パスで常連化しており、幾度も咲たちを助け、咲の秘密?…の恋人でもある。 「その道はその道のプロに任せるのが最短コースだから、調べてもらって、来て貰いました」 「そう言うことだ。アレも復活させて貰ったしな。協力ならいつでもするぜ」 玄関前に停まった真っ赤なベンツ。 「いつ来ても落ちつかねぇ。警視庁にヤクザの組長って、おかしいっスよね近藤さん?」 「まぁ…新しいヤクザの形じゃねぇか?型にハマった組じゃ、今の時代を行き抜けねぇ」 専属スーパー運転手の原田岬と、バリバリの武闘派を貫く(じん)の側近、近藤義史である。 (1番型にハマってる人が言うかな…全く) そんな2人を待たせ、神が話を始めた。 「あの高嶺志穂って女、元は銀座のクラブ『クリスタル ナイト』にいて、たまたま店に来た高嶺真純と…っていうパターンだ…が、全て新龍会の神林が仕組んだ計画だな。あの店の元締めは新龍会。だから、1人女を潜り込ませてあってな、もちろん働き口を探していたからだが、律儀に恩を返してくれて得た情報だ」 「つまり、最初から高嶺宗治を誘い、裏工作など嫌いな寛三に真純を選ばせた上で、殺害したってことね。恐らく謝皓然(シーハオラン)ではなく、神林単独の企みね」 「神林(あいつ)、新龍会を狙っているとか? 元々、謝皓然(シーハオラン)はターゲットだからね」 ラブの読みと、凛の推測。 神林を知っている桐谷や戸澤には理解できた。
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