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ラブが神を呼んだ、もう一つの理由。
新龍会の改制。
「実はそれが心配なのよ、神」
もちろん、傘下に収まっている様で、決してそうではない新龍会を、神も気にはしていた。
「謝皓然を、あなたに護って貰いたい。このままでは神林に制覇され、ヤクザではなく、ジャパニーズマフィアに成りかねない。皓然は、神林を頼りにし、多分…目を瞑っている…今のところはね。彼を愛しているから」
以前に一度、顔を合わせたラブ。
その心にあるものは、直ぐに分かった。
その神林が、やがて脅威と成り得ることも。
「その役は、私では無理だと思います。その世界に住む者でないとね。そして、それが出来るのは神、あなたしかいない」
それは、命懸けの抗争になる危険を孕む。
それ故に、咲の居るこの場で託した。
警察も黙って見ているわけにはいかない。
それ故に、皆んなの前で神に託したのである。
「なるほどな」
咲の目を見つめる神。
「その役目とアンタの心、確かに受け取った」
「神…」
引き止めたい想いを堪える咲。
「なぁに、神林なんかに新龍会を渡しはしねぇ。謝皓然を失ったら、せっかく収めた上海が、崩壊しちまうからな。任せろ。ただ…ムーミンの方は、お前らに任せるぜ。これ以上は警察の威信もあるだろうしな」
「任せなさい。ムーミンなんてふざけた奴、直ぐに捕まえてやるわよ❗️」
「咲さん…名前は夢眠ですからね💦」
昴が小声で伝える。
ふざけてるのは周りであり、本人ではない。
「次のターゲットは、恐らく高嶺真純。でも直ぐではないはず。志穂が実権を握るまではね」
そう言いながらも、アイに監視させている。
「分からないのは…魁中学の藤堂美波の消えた死体、もしくは蘇生した少女ですね」
「昴さん、この監察官の発言記録は何?」
興味のない話は皆に任せ、風花は今までの記録を読みあさっていた。
「それは、殺される直前に俺が本人から聞いた話だ。学校での検死記録にある傷が、運ばれてきた藤堂美波には、幾つか無かったそうだ」
豊川が補足する。
「そう言えば、中央署の検視官は、その帰りに居眠り運転の大型トラックとぶつかって死亡しましたが、そのトラック運転手は逃走中で、未だ行方不明。更にトラックは盗難車でした」
「久宝、大型トラックなんて誰が盗むんだ?いい物でも積んでいたのか?」
「いえ、何も。目撃者の話では、まるで狙っていたかの様に、急に向きを変えたとか」
「プロの当たり屋だな。ヤクザにはそう言う奴が何人かいて、狙った獲物は外さねぇ」
「その後、藤堂美波を検死した監察官も、ムーミンに殺られたということは、豊川さんが聞いた美波の体の傷、知られたくない秘密みたいね」
他の者はあり得ないと半信半疑だが、紗夜には豊川の話が事実であることが分かっている。
「藤堂美波にも…草吹甲斐の手が?」
ラブが呟く。
自分にある特殊能力の一つ、常人を遥かに超える生体再生能力。
「あり得るわね。甲斐論の文に、人工細胞による再生能力の活性化ってのがあったわ。生き返るまでの効果はないと思うけどね」
昴と調べていた風花が告げる。
もっとも、昴にはちんぷんかんであったが。
「藤堂美波さんの謎は、この柴咲キャスター宛の遺書ね。幸明中学校1年 進藤 由香」
「在校生にはおらず、それに…とてもイジメがある様な気配はなし。謎だわほんとに」
「桐谷さん、先生達には確認を?」
「校長と1年の担任にはね。全くダメ」
何かが気になる紗夜。
「私、もう一度行って来ます。あれだけ強い恨みの文面。絶対に何か必ずあるはず」
「分かった。紗夜が感じるなら、多分黒ね。任せるわ。志穂の子、雅だっけ?あっちもね」
今でも全身が覚えている悍ましさ。
正直、会いたくはないが、やるしかない。
「東邦大学医療センターの怪事件も、速水医師が殺害されたってことは、全て繋がっているわね。狂行の原因は不明だけど…」
「咲さんの言う通り、凶器はあの高嶺寛三を撃ったものと同じだ。片側のサイドガラスと2人の頭を貫いて、反対のサイドガラスに突き刺さってやがった」
「ラブ様、JFK国際空港の映像を入手しました。NJA109便の搭乗が終わる頃に、爆発したファーストクラスの乗客が、1人キャンセルして降りていました」
モニターに搭乗口から出てくる女性が映った。
「ムーミン⁉️」
アイが静止画を拡大して補正する。
長い黒髪で、スリムな体型の夢眠がいた。
「間違いないな。化粧してるが、神林とそっくりな顔立ちだ。これなら、服装や化粧によっては、男性…つまりは、神林尚人にもなれる」
戸澤の発言に合わせて、アイが顔の化粧と長髪をなくし、帽子を被らせた。
「宅配便の男性も、全てムーミン!」
「時間的にも、プライベートジェットなら、先に帰国して、速水の殺害にも間に合うわね」
咲の言葉にラブが重ねた。
その無駄のない計画性と正確な手口。
元同業者として、凛の心に火が灯った🔥
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