「ネタバレやめてよ」

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 決して、彼自身のことが嫌いになった、というわけではなかった。それに、本当は、彼のネタバレのことも、許せないわけでもなかった。  ただ、私が嫌っていたのは──離れて、自由になりたかったのは、「運命」そのものからだった。  出会った日、「運命」だと言った彼には、私たちが結ばれる未来が、すでに見えていたのだという。  だから、私はそれが嫌だった。  何もかも、そんなもので、決まっていてたまるかと、抗いたかった。  だから、彼と別れた後の私は、勝ち誇った気分だった。これで、「運命」を変えてやれたぞと、喜び勇んだ。子供じみた復讐心、あるいは若気の至り、今思うとそういうものだ。  なのに、あの時の私は、これで「運命」などというものから自由になり、白紙の明日を歩んでいける。本気でそう思い込んだ。  ──まあ。情けない話、呆気なく復縁したんだけど。  きっかけについては、正直あまりよく覚えていない。それほどに、曖昧なものだったのだと思う。別れを告げたものの、実際には、顔を合わさないわけにはいかなかった。サークル内での体裁もあり、いつも通りに接するうちに、また一緒に居るようになり、自然と()りを戻した。  そもそも、気が合い、依然好きなままの相手と別れなんて、上手くいくわけなかったのだ。  ──いいか。そのうち別れれば。  そんなことを考えながら、ずるずると交際を続けた。彼のネタバレは、相変わらず私を苛立たせ、私たちは度々喧嘩をした。でも、なんだかんだで楽しく、充実した日々だった。だから、到底やめられなかった。  大学から社会に出て、荒波に揉まれながらも、お互いに、心休まる居場所であり続けた。  だから── 「僕とっ、結婚して、、ください」  ある日彼にそう言われ、私は素直に頷いた。嬉しくて、かつての「運命」に対する反抗心など、つい忘れてしまっていた。
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