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体力はまだ何とか残っているが、オレのメンタルのメーターが空っぽだと無言で叫んでいる。
今日は三年の先輩たちの引退がかかった大事な試合だった。
いつもだったら凌平に勝利報告のメッセージを送るけれど、今日は出来ずじまいだった。
オレがどんな想いをしているのか、凌平は察してくれてるんだろう。
どんな風に胸が痛んで、どうしたらいいのか自分でさえ理解できないのだって。
励むスポーツはサッカーと野球で違うけど、凌平も同じ経験をしたばかりだから。
熱いグラウンドに先輩たちと立つことはもう叶わない。
青い夏の感傷はそう簡単に脱ぎ捨てられるものではないのだ。
「純太、立てるか? 風呂は?」
「あー……すげー汗かいたからシャワー浴びたいけど。動けねー……」
「ん。食欲は?」
「どっかいった」
「だよな」
動き出すにはまだまだ時間がかかりそうなオレの前に凌平はしゃがみ、また頭を撫でてくれる。
言葉はないけどそれが心地よかった。
何を言われたら嬉しいのかオレが分からないように、何を言ったらいいのかきっと凌平にだって分からないんだ。
今はただそれでいい。それが嬉しかった。
「純太。お疲れ様」
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