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その凌平はと言えば、部屋の中に姿が見当たらない。
机のスペースにもいないし、隣のベッドにはきちんと畳まれたタオルケットがあるだけだ。
野球部は今日も朝から活動なんだっけ。
たっぷり寝たはずなのになとまだ働かない頭に半ば呆れ、あくびをひとつ零し起き上がり、そこでようやくオレはからだの異変に気がついた。
何てことはない、単なる朝勃ちだけれど、何もこんな日にまでと自分にげんなりしてしまった。
もっとこの後悔にきちんと落ちて、出来るだけ早く明日への糧にしてまたサッカーに励むのだ、と。
決意の朝にしたかったのに。
抗えない生理現象にため息をひとつ吐いて、オレはもう一度部屋の中を見渡した。
ルームメイトのいる寮生活は楽しくて気に入っているが、ネックがあるとしたら唯一これだろう。
いくら凌平と仲が良くたって、抜くタイミングはどうしたって難しいのだ。
通常であればトイレに向かうところだが、今は幸いひとりだし早くても昼まで凌平は戻らない。
そうと決まればとオレはパジャマの下履きとパンツを下ろす。
おかずなんてものはいつも特になかった、ただ本当に処理するだけだ。
壁に寄りかかり、そこをそっと握りこむ。
「ごめん、凌平」
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