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「恥ずかしいの嫌なんだろ?」
「そ、そう! だから離れ、」
「じゃあ抜いてやる」
「へ……いや、いやいや、凌平くんなに言ってんの……」
「純太だけが恥ずかしいんじゃなくて、俺も共犯になるからさ。そしたら大丈夫だろ」
「全然大丈夫じゃないと思う……それにダチ同士で触るとかナシだろ!?」
「え?」
「……え?」
「男子校あるあるじゃん」
「……なにが?」
「抜き合い」
そう言った凌平はオレのベッドに腰を下ろした。
確実に近づく距離と心底不思議そうに傾げられた首が、元々起きたばかりでぼんやりしていたオレの思考を鈍らせる。
「は、初めて聞いたと思うけど……」
「あー、純太はそういうの鈍いもんな」
「お前、馬鹿にしてんだろ……」
「してないよ。褒めてる」
「ぜってー嘘」
「本当に。そういうのそっちのけで本気でサッカーしてんだもんな」
「っ、」
「純太が頑張ってるって知ってる」
「……もー、やめろよぉ」
凌平のこういうところがいけないのだとオレは火照り始めた頭で思う。
同級生の友達にこんなに甘えていいのか? と疑問に思っても、それを取っぱらってしまうのはいつだって凌平の優しさだった。
すり減ってぼこぼこに凹んだ心に手を当てられて、これまでの日々を称えて柔らかくされて。
凌平だからいいのかな、なんて、弛んだ思考は有り得ない答えを導いてしまう。
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