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「う、うそだ」
「嘘じゃねーよ」
「だって、だって凌平、き、キスしてくんないじゃん!」
「っ、純太……」
ああ、なんでこんな時に。
胸の奥からこみ上げるように涙がこぼれ、とんでもなく恥ずかしくてオレはしゃがみこむ。
情けないところを凌平に見られたくない、それでも優しい凌平は追うように一緒にしゃがんでオレの顔を覗きこむ。
こういう優しいところも大好き。
だから涙は余計に止まってくれない。
オレ、泣き虫じゃなかったんだけどな。
「キスは、好きな人とするもんで、抜き合いの時はしないのが普通、って言われた」
「……誰に言われたのかとか気になるけど、それで?」
「オレがしたいって言っても凌平は絶対してくんなかったじゃん。オレも最初はなんでしたいのか分かってなかったけど……凌平は好きじゃないってことなんだなって……すげーショックだった」
「純太……それ、俺のこと好きって聞こえんだけど。勘違いはマジでしたくねーんだよ……」
「勘違いじゃねーよ、オレも……オレは、凌平が好き。すげー好き、だから涙も出んの!」
ケンカなんてこの約二年したことなかったのに。
オレは声を張り上げて、凌平の胸をトンと打つ。
オレのせいで困った顔をする凌平を見ていられなかった。
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