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「えっ……」
送られてきた写真を見て、思わず小さな声を出してしまった。少し垂れた大きな瞳にきれいな鼻筋、そしてシュっとした輪郭、まさしくカフェ店員の彼だった。そう、先ほど加恋がイケメンだと言っていたカフェの店員さんだ。
思わずきょろきょろと周りを見渡す。たしかに先ほどの店員さんの姿は見当たらない。今日は上がりなのか、それとも休憩なのか。どちらにせよ、彼がレンさんだということが真実味を帯びてきた。
どうしよう……。私のなかのレンさんと店員の彼が結びつかない。レンさんが決して遊んでいるような人だなんて思わないけれど、イケメンなら話は別だ。自分から近寄らなくても女の子が寄ってくるだろうし、そもそも住んでいる世界が違いすぎる。私は一人で本や映画やアニメを見て自分の世界を広げていくのが好きだけど、彼のようなイケメンはきっと友人も多いだろうし外交的な趣味もいっぱいあるのだろう。
そんな風に頭を悩ませているうちに、三十分は経過していた。とりあえず私は加恋に今の状況を報告することにした。
『え、さっきのイケメンだったの。運命的じゃん!』
彼女のメッセージはまるで見当違いだ。私とは違いすぎて、アドバイスにならない。
『お姉ちゃん、わかってるとは思うけど中身はレンさんなんだからね。見た目で判断するのやめなよ。お姉ちゃんの悪いところだよ』
加恋の言葉はぐさりと私の心に突き刺さる。見た目がどうあれ、中身はレンさんなのだ。彼だって中身で判断してほしいから写真を載せていないのだと言っていたではないか。
それでも何と返せばいいものかわからない。私は残りのコーヒーを勢いよく飲み干して、伝票をもってレジへ向かった。
「ありがとうございます」
あろうことか、レジに立っていたのはレンさんだった。
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