マッチングアプリの憂鬱

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 私が彼と知り合ったのは、今年の7月。始めたばかりのマッチングアプリ上で、彼からいいねが届いたことがきっかけだった。初心者の私には、アプリ上での出会いにいくつか鉄則があることを知らなかった。その一つである顔写真の登録、を彼は満たしていなかったのだ。自分も後ろ姿しか登録していないのだし、と何も気にしていなかった当時の私は、すぐさま彼とのやり取りを始めることにした。  私がいいねを返した後、最初に送られてきたメッセージは次のようなものだった。 『初めまして。レンです。ハルさんのプロフィールを見て、趣味が合いそうだなと思って連絡しました。歳も同い年だし、ぜひ仲良くしたいです。よろしくお願いします』 メッセージを見て、特に不真面目そうな印象は受けない。趣味が合いそう、という文字に反応して彼のプロフィールをしっかりとチェックすることにした。ああ、本と映画とアニメが好きなのか。そんな人は他にもいるかもしれないが、イヤミスと呼ばれるミステリーが好きでアクションや恋愛映画は苦手、と明記してあったことに興味を惹かれた。私も全くの同感だからだ。  次に、私のプロフィールを確認する。私は趣味のところになんと書いていたのだろう。画面をスクロールしていくと、私も趣味には本と映画とアニメを挙げている。一言欄に添えていたのは、恋愛ものは苦手ですがバッドエンドのものは受け付けます、という一風変わった文章だった。こうして改めて見てみると、彼以外からのいいねが少なかった訳が理解できる。この一文を見て趣味が合いそう、と思った彼は相当な曲者なのだろう。そう感じた瞬間、胸が高鳴るのを感じた。彼のことをもっと知りたい。
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