マッチングアプリの憂鬱

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 気づくとその日は眠りについていて、レンさんのメッセージに気づいたのは翌朝のことだった。 『僕もハルさんの言葉を自分のもののように感じるときがあります。本当、気が合いますね。僕は大学四年生なので、ほとんど履修も終わっていて授業のない日が多いです。そういった日は大抵カフェでアルバイト、または家で映画やアニメを見ています。本は寝る前に読むのが好きです。ハルさんは休みの日、何されてますか?』 あ、レンさんって学生だったんだ。私は慌てて再度プロフィールを読み直す。たしかにレンさんの職業欄には学生だと書いてある。年齢が自分と同じだから、てっきり社会人なのかと思い込んでいた。私が誕生日を迎える前で同い年だということは、一つ下の学年という可能性もあったではないか。本当は年下はタイプではないのだけれど、もう私はとっくに彼のことを好きになってしまった。 『単位をほとんど取り終わっていて、偉いですね。私は寝る前に読む本も好きですが、カフェで珈琲をすすりながら読む本も好きです。休日はそうして過ごしていることが多いです。もちろん、映画やアニメは帰宅後観ますけど』 メッセージを入力しながら、意識せずにやにやしてしまっていた。それに気づいたのは、妹の加恋に指摘されたからだ。 「お姉ちゃん、彼氏でもできたの?」 久々に会った加恋はまた少し大人びたような気がする。私よりも三つ下なのだがしっかりしていて、そつがない。 「彼氏じゃないよ」 「じゃあ、好きな人だ」 すぐに訂正されて、私は黙りこくるしかなかった。 「そんな加恋こそ、雰囲気変わったじゃない。彼氏、できたんじゃないの?」 「ああ、できたよ」 顔も赤らめずあっけらかんと答える加恋に、私とどうしてこうも違うのだろうと考えこむ。彼女はどちらかというと、私の苦手な華やかな世界に生きているタイプだった。それでも加恋に苦手意識を持ったことがないのは、彼女が自分の妹だからという理由のみではない。裏表のない性格、愚直なまでの素直さと秘められた正義感に憧れと似たような感情を持っていた。  加恋は特別な存在なのだ。だから、私のパーソナルスペースである”行きつけのカフェ”に入ることを許される。
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