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航のためではない。彼らが三人で一緒にいられるようにしたほうがいい。花南はそれを避けているようだが、このまま切れたら、あの小さな子は永遠に花南を、慕う叔母を失うだろう。花南もまた心苦しさを背負って生きていくことになってしまうだろう。そう思っていたから、陥れた。耀平と一緒に……。
だがそれも間違っていなかったと潔は思う。
立派な青年となった航を見て、航が若い母親となった花南と仲睦まじく過ごしている姿を見て確信できた。
「小さなころから知っているからこそ、立派になった航君に会えて嬉しいよ。やはり、頑張ってここまで来た甲斐があったね。すごく嬉しいよ」
「親方……」
そんな照れている息子の隣に、背が高いお父さんが並んだ。
眼鏡をかけている青年が、父親と笑顔で視線を合わせる。
立派と言ってもらえてよかったなと耳打ちをするお父さんの言葉に、また眼鏡の青年が照れている。
よく見ると、面差しが異なる。
航の顔立ちは、目鼻立ちがはっきりしている彫りが深い顔立ちの父親とは異なる。涼しげな目元で和風の顔立ちである息子。倉重の祖父似だと言われればそうとも思えるが、父子は若干異なるものを醸し出す。
なのに、二人が目を合わせてふっと一緒に微笑んだその表情。それは一緒、そっくりだった。
正真正銘の父子だった。面差しの違いなど、どうでもよくなる。
目と目が合った時に醸し出す揺るがない信頼。それはもう父子で間違いがない。彼らが血縁に勝るものを培ってきた証拠だ。
彼らは乗り越えた。改めて目の当たりにする。
潔も、行かねば――。決意新たに、潔は出発する。
「カナちゃんじゃ危なっかしいので、俺が岡山までの運転を担当しますね」
「危なっかしいってなんなの? ちゃんとできるよ」
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