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「ただいま」
やっと声を掛けると、男二人がダイニングテーブルの側に立ちつくしたままの姿で振り返った。とてもびっくりした顔を揃えてカナを見ている。
「どうしたの。なにかあったの」
カナの顔を見て、二人がちょっと焦って、でも……、息があったようにして目と目を合わせその視線で会話をしているようだった。しかもなんだか通じあっているように頷きあっている?
「カナ。航のことで頼みたいことがあるんだが」
「え、なに。わたしにできること?」
父親のお兄さんが、カナに航のことを任せてくれるとなるとカナは身構えるが、そこは受けたい気持ちが湧いてくる。
「夏休みの前に航の学校で、三者面談があるんだが、その時期どうしても日程がずらせず、担任の先生のご厚意で『お父さんが空いている日の夏休みでもかまいませんよ』と言ってくれたんだ。ただな、その後もこの日がいいと先生と日程が合わずに困っている。できれば先生の意見を早めに知っておきたい」
三者面談。航はもう高校三年生。受験生だった。ただ志望校はほぼ絞ったが、航がまだ迷っているとは聞いていた。
「その三者面談に、おまえが行ってくれないか」
え!? カナは面食らった。
「わたし、航の受験に関しては一般的な受験の雰囲気しかわからなくて、お母さん知識と感覚ゼロだよ!」
「先生の話を聞いて、俺に報告してくれたらそれでいいから」
「せ、先生の話聞いて、わたし、わかるの?」
すでにカナはパニックに陥っていた。そのせいか、航がにやっと楽しそうに笑っている。
「おねがい、カナちゃん。そうだ。先生もカナちゃんに一度、会いたいと言っていたからさ。俺の母親紹介で来てよ」
「おお、そうだな。一度、先生にも会っておいた方がいいと俺も思うな」
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