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うん、ちょうどいいね。うん、ちょうどいい。と、父子が微笑みあった。
血は繋がっていないけれど、やっぱり育ての親と子としての絆はしっかり目に見えてきている。
それでもカナは首を振る。
「む、むり。十七歳の、本当のお母さんとは違うもの。う、うちのお母さんは? お母さんは航の成績をずっとみてきたじゃない」
「そのお母さんがな。もうカナにさせなさい――ときっぱり言うんだ。できなくてもやらせなさい。耀平さんも甘やかしすぎと逆に怒られたぐらいだ」
確かに。カナ自身も『お母さん、任せて』と航を引き取ったのだ。ついうっかり、情けなく頼ってしまうところだった。しかも耀平兄さんを『だめな夫』にしてしまうところ……。
「うん、わかった。行くよ……、わたしなんかでよければ」
意外だったのか、目の前で父子が揃ってとてつもなく驚いた顔を再び揃える。
「ほんとうか、カナ」
「カナちゃん、ほんとに!?」
え、なに。その反応? でもカナもすぐにわかった。カナにお願いして、すぐに了承してくれるとは思わなかったのだろう?
気難しいカナがそっぽを向き、ではどうしようかと父子で話し合っていたような気もしてきた。
それならなおさら!
「いちおう、航のお母さんだもん。こんな時にちょっとでも役に立たないとね……」
自信なさげに、でもそれを悟られないよう強がって言ってみた。
よく言ったカナ! カナちゃん、ありがとう! 大好きな兄さんと航が揃ってカナを腕に抱いてくれたので、ますます引き下がれなくなった――。
――という経緯にて、本日、カナは航の高校へ出掛けようとしているところ。
だからカナはがちがちに緊張している。
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