【4】ちーママさん(カナ視点)

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「花南さん、来ましたよ。お気を付けて」  キーパーさんが玄関先までタクシーを呼んでくれ、カナは娘の千花と炎天下の中いざ出陣。 「花南さん、大丈夫ですか……」  母親ぐらいの年齢のキーパーさんが心配する顔。 「い、行ってきます」  カナも今日は、おでかけ用のワンピーススーツで『きちんとお母さん』を装ったつもり。  まだ乳児の娘を抱いて、タクシーに乗り込んだ。   ✼••┈┈┈┈┈┈••✼  高校の正面門に到着。 「遅い! やっぱギリギリだった」  夏の白いシャツに黒スラックス、制服姿の航が仁王立ちで待っていた。  タクシーを降りたカナは、千花を抱いた姿でうつむく。 「ちーちゃんの帽子がなかなかみつからなくて」 「だから昨夜のうちに、揃えておけって俺言ったよね」 「……抱っこしたら、いきなり、うんちもしたから」  うんち……。航が復唱し、カナの胸元にいるベビーピンクのかわいい服を着ている千花を見下ろした。 「あはは! うんち!」 「声、大きいって」  カナはまわりに誰もいないか確かめてしまうほど、航がケラケラと笑っている。  やがて航の男らしくなった手が、娘『千花』のかわいい帽子へ。 「今日も絶好調だな千花は。よくきてくれたな、兄ちゃんの学校に」  元気よく今日もうんち。航がそういって、愛おしそうに妹の頭を撫でている。 「やっぱ小さな子供って思い通りにいかないんだね。ま、しようがないか。そんなことだろうと思って、先生にも『きっと遅れます』と言ってあるんだ」 「えー、そんなこと先生に言ったの?」
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