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「航。そんな姉さんのことで遠慮しなくていいんだよ。兄さんにも話すんだけれど、兄さんには前の奥さんでも、わたしにとっては前の奥さんというよりは、実のお姉さんなんだから」
「前の奥さんの話って、嫌なんじゃないの」
「普通はね。でも、別に、わたし、姉さんと争って兄さんを好きになったわけじゃないから」
「いつから、父さんと? ……俺が子供の時から、もう付き合っていたんだよね」
「小樽から帰ってきてからだよ。いまの家に兄さんと一緒に住むと決めた時からだよ」
「……カナちゃんはいつから」
カナは戸惑う。つまり航はいま、両親がどこで恋に落ちたかを聞きたい子供になっている。
でも、迷うまい。彼はもう子供じゃない。カナは意を決した。
「お義兄さんとして、うちに来た時から」
とてつもなく驚いたのか、仰天したまま固まってしまった。
「ひと目ぼれ!?」
「ではないと思う? だって。お姉さんと幸せそうなお兄さんが好きだったんだもの。航が生まれてすごく嬉しそうなパパになったお兄さんもよかったなあ。とにかく、わたしは結婚するよりガラスが一番だった。そんなわたしにきっとできないだろう『素敵な家族』を姉さんと兄さんが見せてくれていたの。その側にいられたらよかった。その世界を見るには、大好きな姉さんだけではだめ。素敵なお兄さんとかわいい航がいなくちゃだめだったの。わたしはそばにいる叔母さんで妹、義理の妹。それでしあわせだったの」
「それが、カナちゃんの……はじめての、父さんが好き、だったんだ」
「男と女はあとからひっついてきたの。そうなってからの方が辛かった。わたしと義兄さんが義兄妹でなくなるのは簡単ではなかったよ」
知ってる。子供だったけれど、俺、見てきたよ。
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