【4】ちーママさん(カナ視点)

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「ちーちゃん、ねんねしたままおりこうさんだったね」  暑いのに、ママの胸にぴったりくっついたままスヤスヤ。泣きもせず大人しくしてくれていて助かったから、カナは眠っている娘の頭を撫でた。  だけれど学校を出て、一緒に自宅へと歩いて帰る航は悶々とした顔。 「航。どうしてお父さんの大学に行きたいの」  航は答えなかった。でも、カナもわかっている。息子として父親と同じになりたいか、越えたいかなのだろう。  でも耀平は父親として、息子の将来が少しでも安泰であるような指標をと考えているのだろう。 「跡は継ぐと決めている。でも、だからって……。倉重の商売をするのに、こっちの学校が、しかも父さんの出身校より商売に有利なんて漠然とし過ぎているよ」 「だよねえ。わたしもそう思う。でも、もしかすると、兄さんはその大学の出身ではないことで苦労したのかもね」 「でも。父さんは、もう祖父ちゃんの後継者だって決まっているし、これまで倉重をちゃんと守ってきたよ」 「お父さんと同じ苦労をしてでも、お父さんと同じ大学に行きたいってことなの?」  また航が黙った。そしてカナもここで違和感を持った。やっぱり……。お父さんとおなじではないと、息子ではないと思っている? そんな気もしてきた。 「たとえば、なんだけれど。広島大学とか考えたことない?」  航が唖然とした。はあ? なんでそこで広大?? と。 「広大じゃないけれど、大学時代はわたしも広島だったから。芸術学部があるってだけで行ったんだけれどね」 「はあ? カナちゃんと同じになれってこと? んー、……、俺ももう少し遠いところで、独り立ちてやってみたいんだよね」
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