【4】ちーママさん(カナ視点)

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 またカナの入る隙はなし、だった。  そのまま工房へ戻った。   ✼••┈┈┈┈┈┈••✼  夕方になり、工房も終業。カナは再び自宅へと戻り、いつも通りベッドルームで汗を吸い込んだ服を脱いで着替える。  下着を替え、新しいシャツへと着替え終わると、耀平がベッドルームに入ってきた。 「終わったのか」 「うん、暑かったよ。ちーちゃん、どうしてる?」 「航と遊んでいる」 「そうなんだ。じゃあ、シャワーを先に浴びてこようかな」  先生が来たこと、なにを話したのか。それを気にしないでベッドルームを出て行こうとした。  しかし、身体ごと引き留められ、もう兄さんの白いシャツの胸の中に抱きしめられていた。  汗でべたついてしまった黒髪なのに、そこに兄さんが鼻を寄せて匂いを吸い込んでいる。 「ガラスを吹いた後の、カナの匂いだ」  よく言われることだったので、カナは黙って聞くだけ。 「離して。汗を流して、いまのうちにちーちゃんにおっぱいあげておくんだから」  すると、今度は少し顔を離した兄さんが、なにか面白そうにしてカナを見下ろしている。なにかを含んだような笑み。 「な、なあに?」 「ちーのママだな」  カナが千花のことを『ちーちゃん』と呼ぶようになると、今度はパパの耀平は『ちー』と呼ぶようになってしまった。 「あたりまえでしょう。なんなのよもう」  まだからかうような楽しそうな、義兄の顔で見下ろしている。  でもその顔が急に優しく崩れた。 「航のちーママでもあったな」 「なに、それ」  ちーちゃんのママはわかったけれど、航のちーママの意味はわからない。 「航の母親をしてくれたな。ありがとうな」
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