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耀平もハッとする。
「そうでした。いえ……、まだお互いに義兄妹が抜けなくて困っています。それに花南が小樽でお世話になっていた時は義妹でしたから」
「もうすぐ花南の出産から一年。今年も花南から年賀状をもらいましたが、かわいいお嬢様ですね」
「あ、いえ……、ありがとうございます」
もうすぐ一歳になる娘『千花』のことを言われると、耀平もさすがに照れくさい。
昔ながらの大きなストーブがある事務所のソファーへと案内をされる。もう顔見知りであり、電話やメールでもやり取りをする事務員女性も『お世話になっております。いらっしゃいませ』と暖かい紅茶を出してくれた。
遠藤親方と向き合い、今回、ここまで訪ねてきた本題に入る。
「新しい食器をご所望でしたが、おすすめはこちらになります」
目の前に、デザートボウルやグラスに小皿が並べられる。
一目見ればわかる。ここの商品はシンプルでありながら、そのラインやフォルムに品がある。
「いいですね。いつも一目で気に入ってしまいます」
耀平も手にとって眺めた。
「これから夏場の懐石料理にて、涼しげな演出をするのにガラス器は必要です。ですが近年、それとなく洋風の雰囲気を取り入れることもお客受けが良いため、季節問わず演出のためのガラス器を増やしたいと思っていたのです」
「いつもこちらのガラスをご愛用くださいまして、ほんとうに感謝しております。ホテルのディナー、結婚式の披露宴、そして旅館の懐石料理、使用された際のお写真を送ってきてくださいますが、制作した職人達が自分のつくったガラスの行く先を知り、とても励みにしております」
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