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「それは私が……」
「さすがです。やはり師匠ですね。こう見ると、花南はまだなのだと思ってしまいます」
切子の模様の緻密さ、尖端までの切り込みの美しさ。素晴らしいものだった。
「こちらを頂きます」
「ご入り用の点数をお決めください。追加にて作成します」
「わかりました」
今回も欲しい品が見つかり、注文数と見積もりの話を親方と煮詰めた。
ひとしきり商談が終わると、おかわりの紅茶を煎れてくれる。ひといき味わう耀平の目に見える窓には、横に吹きすさぶ吹雪。なのに事務所は暖かく荒れている外とは異なり穏やか。
「花南はきちんと母親をしていますか」
親方からの問いに、耀平もちょっと笑って答える。
「しております。意外とやるんだなあ……と思っているのですよ」
親方もそこで笑った。
「意外と、花南のような興味がなさそうだった女性が、きっちりやる母親になったりするんですよね」
「まあ、それでも。ガラスがなければ他のことだってやらない――というかんじはそのままです。ガラスがあるから子育ても頑張ってるというところですかね。ただ、一生懸命であっても、ガラス以外は不器用なのはそのままです」
「あはは、目に見えます。いや、でも、年賀状でいただいた花南の顔がいままで見たこともないいい顔だったので……。しあわせなんだなと。ほんとうに一時期、どうしてそんなことになったのかとハラハラしたものです」
親方もしみじみとティーカップを傾け、紅茶をひとくち。耀平も何のことを言いたいのかわかってしまったので、言葉が見つからない。
カナと別れてしまった時、義妹の行方が一時期わからなくなって豊浦の倉重家が騒然としたことがある。
★おしらせ★
◇『花はひとりでいきてゆく』のコミカライズ、【秘密の花】
本日、2/1 6巻配信開始です(金子さん登場から……)
※U-NEXTさん、まんが王国さんでは先行配信にて分冊版7話発売開始
詳細ページはこちらにリンクあります
https://estar.jp/comments/65548990
よろしくお願いいたします😌🌸
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