【5】凜と咲く(耀平視点)

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 出産前に商談があった大手通販会社の申し出で作ったガラスのペンダントトップの画像と、カナが今年のクリスマスともうすぐやってくるバレンタイン用にと考案した切子グラスのキャンドルグラスだった。 「どれも売れているようですね」 「はい。おかげさまで」 「花南らしい商品です。とくにこのキャンドルグラス。切子のグラスの中に、ガラス細工のハートや星が真ん中に浮かぶように透明なジェルワックスを注いだこちらの商品は売り切れて、さらに追加制作したようですね」 「そうです。通販雑誌で倉重ガラス工房が紹介されてから、アクセスがだいぶ増えました」 「やはり、花南は購買客にウケのいいものを考案する。創作としてのセンスもあったようですが、こういう商品としての考案も女性ならではですね。羨ましいものです」  カナが考案したガラスの星が浮かんで見える透明の切子キャンドルグラスはすぐに売り切れた。追加の要望もあり若干数追加制作したがそれもすぐに【Sold Out】。  この評判にあやかり、今度はハートが浮かぶキャンドルをバレンタイン用に向けて販売。こちらも先日【Sold Out】となったばかり。  そんなカナの商品の売れ行きを眺めていたのも親心だったのか、耀平は訝しく思う。だがここでやっと親方が耀平に告げた。 「うちのオーナーが、自分の店で花南の商品を扱いたいと言っております。今度、仕入れの訪問に来たら是非に会いたいと伝えて欲しいと言われているのですが、いかがですか」  耀平も驚き、目を見開く。 「いえ、しかし……。ここは小樽ですし。小樽には小樽のガラスがありますでしょう」
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