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通販という手を得たが、それもいつまで続くかわからない。この小樽での集客力は非常に魅力的なのは確か。しかもいまは海外の観光客がこの北海道に押し寄せてくるほど。新千歳空港も海外の観光客が非常に多かったことを耀平も思い出す。
よかった。冬の厳しい季節だと躊躇っていたが、思い切って小樽にやってきて。おもわぬチャンスが転がり込んできた。
このような商談は耀平がテキパキまとめるが、やはりチャンスはカナのガラスが運んでくる。こうしていつまでも彼女のガラスを支えていきたい。そう思っている。
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オーナーとの対面は、その日の夕食の席となった。
いつかカナが連れていってくれたワインも置いてある寿司屋だった。
そこで小樽ガラス工房のオーナと向きあう。オーナーは『大澤』という女性だった。
黒いフェミニンなスーツを品良く着こなす知性を思わす女性だった。
「遠藤から常々、倉重様のことをうかがっております。ゆっくりお話をしてみたいと思っておりましたので感激しております」
「こちらこそ。その節は義妹がお世話になりました。こちらの工房で叩き込まれたことが、彼女の職人としての基礎になっております。感謝しております」
大澤オーナーがレエスのハンカチで口元を覆い『ふふ』とおかしそうに笑う。
「まだ妹とおっしゃるのですね」
「ああ、申し訳ありません。遠藤親方にも笑われましたが、どうも義兄妹の関係が長かったものですから、結婚してもなかなか抜けません。花南もいまだに私のことは兄さんと呼びます」
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