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だが大澤女史はそこでワインを煽ると、勝ち誇った笑みを見せた。
「若い女の子はいままで皆、夫の手にかかると落ちてしまうんです。でも、そこは同じ資産家のお嬢さんとしてのなにかがあったのでしょうね。夫をうまくあしらった若い女の子を初めて見ました。あとで花南さんも夫と同様の資産家のお嬢様と聞いて納得いたしました。夫の財力などに酔うはずもなかったわけです。それに……」
そこでまた大澤女史がワイングラスを片手に、耀平を見てにっこり嬉しそうに微笑む。
「あの頃からきっと、花南さんは、お義兄様一筋だったのでしょうね」
「まさか。この小樽で出会った同年代の青年とつきあっていたようでしたし」
「ああ、あそこの長男さんね……。あの時のパーティーに彼も来ていたから。ああ、そうそう。あの時、あそこの長男さんも花南さんを気に入ったみたいで一生懸命、話しかけていたわね。あれが出会いだったのかもしれませんね」
やっと耀平もあの時のストーカーになりそうだった真面目な青年とカナがどこでどう出会ったかを知る。
そうか札幌市内大手のレストランオーナーの長男だったから、飲食店オーナーの集いという繋がりだったとやっと知る。でも、もう過去のことだ。
大澤女史の夫が誘おうが、おふくろさんが強烈だったストーカーになりかけのお坊っちゃまと付き合った過去があろうが……。
「それでも花南さんは、長男さんともすぐにお別れしたでしょう。いま思うに、あの長男さんと付き合い始めたのも、うちの夫を諦めさせるためだったような、そんなふうに感じてしまうことも。
もちろん、お義兄さんを諦めて、気のよさそうだった長男さんと生きる道を探ろうと決意されていたかもしれません。
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