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凛とした空気が張り詰める、北国の夜空を見上げる。
星も見えない空に舞う小雪は、六花。結晶のまま、花びらのように落ちてくる。
観光地小樽、寒空の下でもたくさんの観光客。北海道で名が知れた菓子店も運河沿いに集結している。
その各店を回りに回って、耀平は北国の『ショコラ』を視察する。
素材を大事にしたものが北国のスイーツらしさ。
あれもこれもと買い込み、最後はホテルでひとつにまとめて宅急便で山口に送った。
最後の夜は札幌で。ふらりと立ち寄った小さな菓子店。いま流行のショコラティエのショップだった。希少カカオをつかったという花の形のショコラに釘付けになる。数枚で何千円とあり仰天したが……。その花が今日はどうしてか花南に見える。
ニューヨーク風の包みのそれと、そばにホワイトクローバーの蜂蜜の小瓶があったのでそれも買ってしまう。
だがそのチョコレートを見て、耀平はふと笑いたくなってきた。
「おかしいよな、男の俺が一生懸命にチョコレートを探しているだなんて」
そしてちょっと不安になる。
「まさか、またぶきっちょな手作りチョコを作っていないだろうな??」
二年前に初めて彼女がバレンタインに手作りのチョコを準備してくれていた。去年は千花の出産があり『時期だが余計なことはするな』とよくよく注意して安静にさせていたからなにもなかった。今年は?
「作っていたとしても、あの出来映えだからな。もう一昨年ので気が済んだかもな」
あの時のぶきっちょな出来映えのものを思い出し、耀平はまた北の都市、小雪が舞うなかついつい頬を緩んでしまいどうしようもなくなってしまう。
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