①思い出の花嫁衣装

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 でも次には可笑しそうにわらいだす。  いまも変わらずにある窓辺のカウチソファーへと、夫が腰をかけた。 「あー、やっぱりカナだな。カナがいちばん面白い。んー、そうだな。着物姿はそそられるが、俺は最高の花嫁衣装を頂いた男なので、それに勝るものが未だに登場しなくてね」  最高の花嫁衣装?  カナは眉をひそめる。 「……え? 花嫁衣装って。わたし、お母さんの黒引き振り袖を着させてもらったけど、耀平さん、それ脱がしていないじゃない」 「当たり前だろ。あんな厳かで神聖な着物を不埒な気持ちで触れるもんか。畏れおおいではないか。おまえ、忘れたのか。自分が言ったんだぞ。この日を初夜にしてくれって」  カナもはっと思い出す。  そして自分でやっておいて、この歳になったカナには、とてつもない羞恥心が襲ってきて一気に顔が熱くなった。 「あれが、花嫁衣装!?」  そういえばあの時、義兄さんがカナを愛しながら、今夜のこれは花嫁衣装だなと言ったような言わないような?  カナにとって花嫁衣装は親族お披露目食事会の黒引き振り袖が心に刻まれているので、夫の心に残っている自分の姿が意外で驚きしかない。 「強烈だったな。きちんと胸元を隠しているアメリカンスリーブの黒いドレスだったのに。その下に隠しているショーツが、ちょっとそこだけ覆っているだけの小さなショーツで、しかも純白。さらに、俺にだけわかる香りをそこに付けて、おまえ、兄さんだけだよって誘ってくれただろう」  やめてー、やめて! 私の若気の至りみたいな、そういう恥ずかしいことをしていた自分を思い出させるの!  あれをやってのけた若い、かわいい?自分のことを思い出すとカナはどこかに隠れたくなってくる。
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