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彼を見ているとカナも思う。最近、父親のヒロに似てきたなあと……。しかも、吹き竿を持って、父親とガラスを作るなんてこともするようになってきている。将来どうなるかわからないけれど、興味を持ってくれたならやらせてみるのがヒロと舞の方針のようだった。
裾がふわりと舞うワンピース姿の娘が近づくと、ヒロと舞が歓迎してくれて、寛人と千花が楽しそうに一緒に食事を始めた。
千花はそこが落ち着くようだった。
妻で母であるカナのそばから、倉重の男三代の輪へと皆が流れて、ふっと一人になった時だった。
「花南さん。ご無沙汰しております」
着物姿の老女と付き添っているスーツ姿の初老の男性が近づいてきて、挨拶をしてくれる。
「女将さん」
岡山の金子女将と、その息子、三男の『弦』だった。
今日は父と耀平が敢えて招待をしていたのだ。
「お久しぶりでございます。本日は来てくださって、ありがとうございます」
なのに。金子の女将の瞳がもう濡れていた。
「航さん、ご立派になられて……。このようなお席に来る立場ではありませんのに、お招きに甘えて来てしまいました。本日は、おめでとうございます」
「花南さん、母のために、ありがとうございます」
おふたりに深々と頭を下げられてしまう。
「豊浦の父と夫の耀平の意向ですから。それに、金子の料亭で、こちらのガラス食器を仕入れてくださっている顧客様なのですから堂々としてくださいませ」
「いつもあなたと耀平さんが気にしてくださるので、ついつい。それにしても、ほんとうに航さんは、忍に……」
「母さん、それ以上は――」
忍の弟、料理人だという三男の弦が、母親が言いかけたそこを遮った。
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