①娘のような

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 そんな彼女がマグカップから湯気たつ焙じ茶を飲んで、ほっとひと息。外を眺めて呟く。 「はあ、小樽もやっと雪解けですね」 「手宮の博物館に雪解け水の滝が現れると春のしらせですね」 「蜃気楼もそろそろかしら。あ、そうそう。カナちゃんからお葉書が届いていたんですよ」  落ち着いていたソファーから立ち上がり、事務デスクまで。そこから一枚の葉書を手に取って、潔の目の前のソファーへと戻ってくる。  そこで葉書を差し出された。 【 倉重ガラス工房 展示会 ご案内 】  そんな印字が最初に目に飛び込んできた。 「ああ、また開催されるんだね。あちらの工房は順調だね」  葉書を受け取り、日時と会場を確認する。  実家経営の温泉旅館ホールから開催され、広島の画廊で数日行われる。倉重ガラス工房が一年に一度、定期で開催しているものだった。  職人達の力作に、主力商品の展示、販売が行われる。  今年はそこに『倉重花南・金賞受賞作』も展示されるとの案内文もあった。
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