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しかし息子ふたりと末娘は、しっかりまともな価値観になるよう育てたようだった。
長男の一颯君は成人して社会人になると、札幌の食品会社に数年勤めた。その後、社長であるお父さんの補佐をするために、大澤倉庫の社員になった。おそらく四代目社長になるのだろう。
次男の一清君も活発な次男君そのもので、スキー大好きが講じて学生時代はクロスカントリーの選手になり、成人してインストラクターに。それだけでは食べていけないとかで、札幌でワインバーを経営している。お父さんが観光向け飲食店を展開させている影響なのか、こちらの事業を引き継ぎそうだ。
そして、夫妻がアラフォーという高齢出産的な時期に生まれた末娘の一花。いまの時代を自由に闊歩するような女の子に育って、彼女は実家事業とはまったく関係なく、医療の道へ進もうとしている。
末娘の人生選択に、パパもママも、一緒に子育てを担ってきた優吾叔父ちゃんも、そしてお兄ちゃんふたり、そしてまだまだ元気なお祖母ちゃん、家族みんなが大プッシュ、応援をしてくれている。
愛されて育った子はまっすぐだな。そう思える女の子だ。
ここは、花南が二十代だったときと異なる。花南は小樽に来た時点で影を背負っていたことがわかっていたからだ。
そして潔はまた、そんな一花をみていると今度は『孫ってこんなかんじなのかなー』とにこにこせずにはいられなかった。
「じゃあ、一花ちゃんのおかげで、パパは入選できたんだね」
「うん。お祖母ちゃんも、優吾おじちゃんもそう言ってる。パパは仕事はできるけれど、芸術的感性はないんだからって。そうするとパパが拗ねちゃうの。でも入選という文字と、届いた受賞の盾を見てにまにましてるんだ。面白いんだよ」
「そうか、そうか」
樹社長のそんな顔が思い浮かび、潔はまた笑む。
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