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たくさん買ってきた土産袋はそのままお部屋に持って行ってくれるという。
「遠藤様はそのまま、こちらティールームへどうぞ。ウェルカムドリンクがあります。ただいま倉重社長と花南さんをお呼びいたします」
そんなすぐに会えると思わなかったが、来てすぐに顔を見せてくれると聞いて、潔の顔は綻ぶ。
他の従業員が、あちこちで買い込んで来たお土産袋をいっぺんに持っていこうとしている。
「あ、これは。花南が好きなので――」
小樽の有名菓子店で買い込んだものはすぐに渡したくて、そのショップ袋だけは、潔から抱きかかえ返してもらう。
こちらのお嬢様のことを、親しげに呼び捨てたせいか、若い従業員もフロント責任者だろう凜々しい彼も面食らった顔を揃えていた。しまったと思ったのだが。
「そうでしたか。花南さん、小樽にいるときには、そのお菓子が好きだったんですね。きっと喜ぶと思います」
凜々しい彼が本人のように嬉しそうに微笑み返してくれたし、何故か若い従業員はくすっとおかしそうな笑みをこぼしていた。
若い従業員は丁寧に他のお土産袋をもっていってくれる。
訝しそうについてくる潔の緊張が見て取れたのか、逆に凜々しい彼が親しげに話しかけてくれる。
「永遠のお嬢様といいましょうか。倉重社長とは義理の兄と妹だったわけですから、おふたりそろっていても、未だにお兄さんと妹さんのままです。いつも社長がおもしろおかしく花南さんをからかっているんです。航さんもですよ。私たちもどちらかというと、社長夫人とか、航さんと千花さんのお母様というよりかは、『花南お嬢様』なんです。ガラス以外は抜けているといいましょうか」
しっかり者というよりかは『従業員をほっこりさせてくれるお嬢様なんです』とのこと。
あの花南が『ほっこりお嬢様』? いやいやそんなことあるもんかと潔はますます首をひねった。
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