⑧花の動力

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「工芸品を愛する父と姉、しかし父と彼女には家を継いで守るという使命が生まれながらに与えられていました。自由に将来を選べなかったとも言えます。ですが、倉重の家業に誇りを持っていましたから、責任を背負う覚悟も持っていました。そんな中、姉とおなじ影響を受けた妹は、工芸を生み出す職人を目指す道を進み出した。姉の美月にとって、妹が職人になることは、自分が職人になることに等しかったのだと思います。日々、妹のバックアップに邁進していました」  一気に言葉を連ねていた耀平の喋りがそこで止まる。  静かな男の想いがいったいなんであるのか。潔はもうそこが気になり、木蓮の灯りだけが揺れる向こうにいる彼へと視線を定めた。  彼がその話の結末を言い放つ。 「花南の動力と遠藤親方の動力、ふたつが合わさった時に思ったんです。妻と妻があの世でばったり出会って、意気投合して、妹と夫を出会わせたのではないかと――」  彼の前妻、花南の姉のことは少々のことしか知らなかった。事情があると聞いて余計にこちらからは尋ねたりはしなかった。倉重の人間から漏らしてくれた少しの言葉から、『そうだったんですね』と受け止めてきただけ。  だからこそ、今回、ここで。耀平が『亡き妻』と『花南の姉』がどのような女性だったかを語ってくれたのだろう。 「花南にとって、ガラスへの執念は『姉の応援』だったんだと思います。自分ではない実家の責務を自ら背負ってくれていた姉の想い、本心。それを胸に吹いている。生み出している。届けている。いまも――。彼女の姉への恩返しなのでしょう」  潔の執念も同じだ。『妻の応援』が残っていたからだ。  潔の中に、衝撃が走った――。  急に頭の中に、女性たちの囁きが聞こえてくる。
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