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そんな潔のやるせない想いと向き合い、立ち向かい、透明にして行く工程。それにそっくりなことをしているのでは……。若い花南が若者らしい遊びもせず、見向きもせず、ひたむきにガラスに向かっている姿に、自分の姿が重なったのだ。
だから余計に娘のように思えたのかもしれない。
倉重家の秘密が渦巻く中で生まれた男児、航君――。
いまは耀平と花南の息子として育ち、立派な青年となっている。
一昨年、父親である耀平が興した『倉重ガラス工房』を引き継ぎ、社長に就任したという。
その時に、母親が産みだした作品『螢川』。
亡き姉ともう一人の亡き義兄をモチーフに吹いたと聞いている。
息子が立派に倉重家の跡取りとして一歩を踏み出したことで、花南の中の姉と、もうひとりの義兄と、心の中でようやく別れができたのではないだろうか。
だからなのか。その作品は倉重家には置かれなかったようだ。
その想いは倉重家から出て行った。無になったのだと潔には思えた。
素晴らしい金春色に包まれた日を数日堪能し、潔はまた旅立つ。
次は岡山へ。『螢川』を納めた料亭へ向かう。
「親方、またいらしてください。いつでもお待ちしておりますよ」
「耀平さん、とても楽しませていただきました。心温まる素敵なおもてなしもたくさん、本当にありがとうございました」
よくある挨拶を最後に、馴染みの彼と別れを交わす。
彼も歳を取ったと潔は別れ際に耀平をしみじみと見つめる。
だが彼の微笑みは年を経るごとに悠然と温かさを滲ませるようになった。白髪交じりの頭にはなったが、端麗な佇まいは、倉重の男として養ってきた品格が滲み出ている。
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