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汚された世界
後ろを振り返ると、地球の輪郭をなぞるように、白い光の帯が伸びていく。
帯の中央から、力強いエネルギーを見せつけながら、真っ赤な太陽が昇ってくる。
白んでいた空は、薄紫色へとグラデーションを彩った。
「ねえ、真っ黒だよ」
彼女は、日の出など見向きもせず、地上に釘付けだった。昨晩の赤い光があった場所は、真っ黒に焼け焦げていた。
煤だらけの煙突を掃除した清掃業者の顔ように。地球の表面は黒く汚れていた。
「また、綺麗になる?」
「あの場所は、もう駄目だよ。汚染されてしまった」
「死んだってこと?」
僕は頷いた。
「どうして、私たちが作ったこの世界を壊そうとするの?」
「どうしてだろうね。命を、自然を、地球を壊してまでやらなければならないことなんて、僕には推し量れないよ」
「神暮らしをしている私たちが離ればなれになったら、この世界をリセットできることを、あの種族は知らないのかしら」
「君が、僕と離れたいと言っていた理由が、それだったんだね?」
彼女は頭を縦に振った。環境破壊を終わりにするために、一からやり直したいと言うのだ。僕たちが離れれば世界は消える。自分たちもただではすまない。僕たちには、そういう力があった。
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