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お願いしますよ!
「で、どうして北極点にいるはずのあなたが、ここにいるのよ!」
「だって、ミナミちゃんと一緒にいたいんだもん」
「そうやって、あなたがちょいちょい私のところへ来るから、地上では台風、豪雨、雷雨、地震、噴火とか起こるんでしょ!」
サウスはご立腹だった。ちなみにミナミちゃんとは、ノースの妻、サウスの愛称である。
「その度に、地上の生物は大混乱なのよ」
ノースは、俯き、しょぼくれる。
「夏に数回って決めたじゃない。それなのに、最近ちょっと多くない?」
サウスは、息も尽かさず続けた。
「今から、46億年前に、私たちは離れましょうと決めたのはあなたでしょう? 地球をどの惑星よりも美しい星にしようと一念発起したじゃない」
「そうだけど……」
「私があなたと離れた理由は、それよ」
ポールはお構いなしに、サウスへと手を伸ばす。
「あ……あぁ……だめ」
サウスの艶っぽい声が漏れる。すると地上では、爆音が響いた。
「ちょっと何するのよ! ほらぁ、富士山が噴火しちゃったじゃない」
「まだ、大丈夫」
「はあ? 何言って、あぁァ……だめよ」
今度は地響きと共に、地鳴りが広がった。北極の氷が崩れ、冷たい海へとダイブしていく。
「もう! 陸の面積が減っちゃったじゃない!」
地上へ目を遣ると、ユーラシア大陸の右脇にあった小さな島が、モクモクと黒煙を上げる富士山の頭を残し、海に浸かっていた。
これにはノースも息を呑んだ。
「おお、これはさすがにやばいな。地軸が垂直に戻ってる」
「ほらほらぁ。私たちの大切な地球を、もっと労わりなさい」
「分かったよ」
そう言ってノースは、渋々、北極点へと帰って行った。
どうしてもミナミちゃんに惹き寄せられてしまうノース=ポール君の体質も理解していますが、ポール夫妻、まだまだ地球をお願いします。
おわり🌱
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