【4】

2/2
前へ
/25ページ
次へ
「ナマコ石鹸、毎日使ってるのか?」 「え? うん。常陸のマレーシア土産だろ? 毎日使ってる」 「全身に?」 「うん」 「なるほど。この辺りの触れ心地が違うように感じるのは、そのせいか?」 「ひゃっ」 「うん。確かに、滑らかな感触が手のひらに当たる。常陸にナマコ石鹸を頼んでおいた甲斐があった」 「えっ? ちょっ、何? 常陸に頼んだって言った? あの石鹸を?」  お前が?  ベッドになだれ込んだ直後。まだ湿ってる肌を撫でながらの恋人の言葉に、声がひっくり返った。 「あぁ。常陸がマレーシアに仕事で行くと兼子から聞いて、土産に買ってきてやってくれと俺が頼んだ。一度、使ってみたいと、お前、言っていたろう?」 「言った。でも、だいぶ前だよ。それを覚えててくれたん?」 「お前が望んだことは忘れない」  うわぁ……! 「あ、ありがと」  うわぁっ。うわーっ!  脳内で雄叫びを上げながら、かろうじて短い御礼だけを発した。  俺の恋人は、こういうとこがあるんだ。普段めっちゃ淡白なくせして、ここって時に特大のキュン爆弾を放り込んでくるんだよ。  全く! この、ときめき泥棒め! 「いつもありがとうな! こんな嬉しいサプライズ。好きと萌えが溢れて、毛穴という毛穴から鼻血が噴き出ちゃいそうになるだろ!」 「いや、鼻血は毛穴からは出ないぞ」 「え? 俺、口に出してた?」 「そこが良い。どんなことも、言葉と表情で俺に教えてくれ」 「あっ……やぁっ」  好きと萌えでテンションも体温も上がった身体を這う指が、遠慮のないものに変わった。 「特に、俺の下で聞かせてくれる可愛い声が、一番好きだ」 「んはっ……んっ」  俺も好き。  だから、一緒に気持ち良くなろうよ。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

55人が本棚に入れています
本棚に追加