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「わかりましたよ。最後の課題というのは移住計画の実行になるわけですか?」
「そうだ。魔王にとって魔界の民は子供も同然。子どもが安全な場所で育つのを見守り、問題を起こすようなら躾けねばならん。よって『子供を育てる』が最後の課題となる」
「駄洒落みたいな課題だな。あなたとはいろいろあったけど、お別れとなると、寂しくもありますね……」
「私もだ。クミンには感謝している。弱い生き物がどういうものか学ばせてもらった」
「どうせ弱いですよ、私は。これからも守ってくださいね。ご支援も引き続きお願いします」クミンが恭しく頭を下げた。
「そうはいかん。私が出発すれば、おまえの『フリーパス付のゴールドカード」は期限切れになる。これからはお前が汗水流して働き、デボラと、そして生まれてくる子供たちを養わなければならんのだ。私の魔力で身分証明書の類はちゃんと作っておいてやったから安心して精進しろよ」
「勘弁してくださいよ、私が人間界で働くなんて無理ですって……」
アルチーナとクミンの話を黙って聞いていたデボラが決意を込めて静かに言った。
「アルチーナ、大丈夫よ。この人と二人でちゃんと生きていきます。本当にありがとう。あなたには感謝の言葉しかないわ。アロンもきっとそう思っている」
「さすがはデボラだ。このへなちょこをびしびし鍛えてやってくれ」
「ええ。任せておいて」アルチーナとデボラが顔を見合わせて笑った。クミンは不満顔だ。アルチーナの頭上にサーフボードが音もなく現れ、足元に舞い降りた。
「では、達者でな」
「アルチーナも元気で」
「クミンよ、怠けたり浮気したりしたら、また魔界犬に戻すからな。覚悟して励めよ」
「わかりましたよ。うるさいな。さっさと消えてください!」
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