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第二章
塔矢が紹介してくれるのはどんな人なのだろうか。面白い、と言っていたけれど、正直不安でしかない。何しろ、千咲が消えてから殆ど誰とも関わらずに暮らしてきたのだ。私の能力のことは黙っておくほうがいいだろう。
不安な気持ちを抱えたまま、その日の講義が終わる。塔矢の講義も受けたけれど誰なのかはさっぱりわからなかった。今年から、と言っていたし、もしかしたら学年が違うのかもしれない。私は少し重い足取りで塔矢の研究室へと向かった。
「涼香くんだろ、どうぞ」
何時ものように扉をノックして、何時ものように塔矢の返事を待って扉を開ける。何時もと同じ煙草の匂いと煙る室内。
何時もと違うのは、塔矢一人では無いということ。塔矢と向かい合って、男性がソファに座っていた。
「...珈琲、お入れ、しますね」
塔矢の催促を待たずに、私は自ら電気ケトルに水を入れた。
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