chapter①

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顔は似た姉妹だけれど性格は、私がママ似で、鈴がパパ似なのだと思う。 鈴は一人で買い物に行くのが好きだけれど、私とママは‘あーでもない、こーでもない’と賑やかに買い物するのが好きだ。だからよく姉妹に間違えられて、ママがお世辞と気づかずに喜んでたくさんの買い物をすることもある。それも楽しいのでかまわない。 そして、小さな頃からいろいろお稽古事にも通ったけれど、ここでも私と鈴の違いはあった。 私は‘全部真面目にやったらパンクする’と最初から思っていたから適当にサボった。やらされることの時間が多いと苦痛だからね。どれも最低限の知識だけで、一応お茶会には出られるくらい、一応浴衣だけは自分で着られるくらい、一応ピアノが弾けると言えるくらい…にはなってやめた。 対して、鈴は真面目。着物は一人で着られるし、振袖の着付けまでしてくれるレベルだ。当然、祖母とお茶会にも参加していたし、華道と書道は師範免状まで取得している。 私は、師範免状を取得して看板が届いたって教室を開くわけでなければ、物置が占領されるだけだと思うのだ。日常的に必要な技術でもないし、何年も頑張る価値が私には理解できない。 それでも鈴がいると、今回のように振袖を着る時なんかは、自宅で着られるのでとても便利だ。 私はベッドにうつ伏せながら、振袖に似合うネイルデザインをスマホで次々とみる。振袖のベース色に合わせて統一感を出すのはマストだから、ベースは赤。左右一本ずつに着物の柄と同じ牡丹をゴールドで縁取るように描いてもらおうか。あとの指はバランスを見て小さな金箔をちらす。
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