chapter①

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「昨日の入浴剤一袋、鈴にあげる」 「ありがとう。普通にお湯に入れるだけ?」 「当たり前でしょ」 土曜日の朝、着付け前に自分でメイクしてから鈴に髪をアップにしてもらう。 「こうして見ると似てないわね」 様子を見に来たママが私たちに言うので、私と鈴は鏡の中の互いを見る。私は振袖用に普段より濃いメイクをしているし、鈴は顔も洗っていないすっぴんだ。 「当たり前よね。ママも急がないと」 「鈴、あとで帯だけお願い」 「うん、いいよ。お姉ちゃん、これつけるの?派手じゃない?」 「振袖には髪にもそれくらいないと、飾り忘れた人みたいでしょ?つけて」 「…ぷらぷらしたところ、切る?」 「それがいいんでしょ?切らない」 「私なら…切る…」 「私は鈴じゃないんだから言った通りにしてっ」 「うん…ごめん」 私が大きな声で言うと鈴がすぐに謝るのは子どもの頃から変わらない。鈴の、自分の意見があるようですぐに折れるところは、私には都合がいいけれどたまにイラッとする。貫き通せばいいのに…ってね。
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