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残業もなく、今日も定時退社だ。社内ではブラウスに深いVネックのブラックジャンパースカートでちょうどいいくらいだったが、外には薄手のコートが必要な季節。コートを手にした時
「綾さん、社長がお呼びです」
パパの秘書、才本透子さんが私を呼びに来た。わざわざこの時間に呼びに来るのは完全にプライベートだよね。
「何だろう?朝は何も聞いていなかったけど?」
才本さんに聞き直しながら部屋を出ると
「「「「お疲れ様でした」」」」
後ろから声が聞こえて‘あっ’と思った時にはドアが閉まった。ちらっと私を見上げた様子の才本さんは小柄な上にヒールが3センチだから、160センチに7センチヒールの私よりずいぶんと背が低い。
「挨拶、まだでしたか?」
「ううん、大丈夫」
まだだったけれど閉まったドアを開けるのはおかしいよね…いつもはちゃんとしてるから大丈夫よ。
一年中、濃紺、もしくは黒のスーツを着ている才本さんより先に
「失礼しまぁす。パパ、何?」
社長室へと入った。
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