chapter①

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残業もなく、今日も定時退社だ。社内ではブラウスに深いVネックのブラックジャンパースカートでちょうどいいくらいだったが、外には薄手のコートが必要な季節。コートを手にした時 「綾さん、社長がお呼びです」 パパの秘書、才本透子(さいもととうこ)さんが私を呼びに来た。わざわざこの時間に呼びに来るのは完全にプライベートだよね。 「何だろう?朝は何も聞いていなかったけど?」 才本さんに聞き直しながら部屋を出ると 「「「「お疲れ様でした」」」」 後ろから声が聞こえて‘あっ’と思った時にはドアが閉まった。ちらっと私を見上げた様子の才本さんは小柄な上にヒールが3センチだから、160センチに7センチヒールの私よりずいぶんと背が低い。 「挨拶、まだでしたか?」 「ううん、大丈夫」 まだだったけれど閉まったドアを開けるのはおかしいよね…いつもはちゃんとしてるから大丈夫よ。 一年中、濃紺、もしくは黒のスーツを着ている才本さんより先に 「失礼しまぁす。パパ、何?」 社長室へと入った。
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