chapter①

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「食事に行こうか、綾」 「突然ね」 「ママからの連絡でね。ちょうど今夜なら私も大丈夫だから」 「いいけど?」 「明日から出張なんだよ。じゃあ、才本くんもお疲れ様。明日からの出張もよろしく」 「かしこまりました。失礼します」 才本さんも一緒に社長室を出ると、ビルの正面玄関から帰る才本さんと、駐車場へ降りる私たちは別々のエレベーターに乗る。パパだけが帰るなら正面に車をつけているが、私が一緒の時には駐車場で待つように運転手に言ってあるのだ。 「どこ行くの?」 「イタリアンをママが取ったって」 「急に食べたくなったのかな?」 「そうかもしれないな」 腕時計を見たパパは運転手の開ける後部座席へと滑り込み、私もそれに続いた。 「出張はどこ?」 「大阪、神戸」 「ふーん、お土産はいらないからね」 「毎回いらない念押しされるのは寂しいな」 だって…海外ならまだしも、国内のお土産はもうたくさんよ、いらない。欲しいものはここで買えるしね。
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