chapter①

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2週間ほど前、野点の大茶会で、ママはたくさんの方と会った。そうすると、年頃の息子や娘のいる者同士を紹介して引っ付けようとする‘おせっかいな仲人気質’のオバサンが必ずいるのだ。 その日、声を掛けられたのがママと沖田夫人だったらしい。 面と向かって断る訳にもいかず‘順番よね、仕方ない’くらいの気持ちを隠さず‘家族で相談させていただきます’と、その場逃れの言葉を言ったのは沖田夫人だったらしい。 ママはそれが分かっていたからその時には、パパにも私にも何も言わなかった。 「それがよ、聞いて。今日の観劇で本当に偶然、沖田様と帰りに会ったの」 「ママ、声抑えて」 パパの言う通りだわ。 沖田様は、おせっかいな仲人オバサンを通さず気軽に一度息子と会ってもらえないか、とママにお願いしてきたらしい。 「万が一のために保険を掛けた言い方をされたけれど、お見合いはお見合いよ。結婚前提よね。すごいと思わない?ビッグニュースでしょ?」 確かにビッグニュースで、すごいよ。沖田財閥御曹司かぁ…そう聞いただけでうっとりするほどの名前だよね。 「わかったわ、ママ。お見合いする」
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