chapter①

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「綾、そんな簡単に返事していいのか?」 「いいよ。付き合っている人がいるわけでもないしね。お金持ちで仕事が出来る人と結婚したら尊敬から愛情が芽生えるって、誰かが言ってたけど私はそれに共感するもの。逆に愛があってもお金がなければ冷めるのよ」 「一理あるが…」 「パパは稼ぐ側だから全面的に共感できないかもしれないけれど、女子からすればそんなものよ。お金は大切よ」 私がそう言うと少々心配顔のパパだけれど、ママは私に賛同してくれる。 「改めて、もう一度乾杯しましょう」 よく冷えた白ワインをグラスへ注いでもらうと、ママがにっこり発する。 「綾のよいご縁に、乾杯」 「「乾杯」」 パパはまだ心配顔ながらも一緒に乾杯した。 「いつ会うの?エステもネイルも美容室も予約しなきゃ」 「来週の土曜か日曜ね。陽翔さんが忙しいみたいだからどちらかは連絡待ち」 「金曜日までにエステとネイルは行くわ」 「美容室は行かなくても、うちで振袖着て、髪を上げればいいわ」 「そうね。ネイル、どんなデザインにしようかなぁ」 「あ、パパは来なくていいからね。堅苦しくならないようにお見合いの仲人もパパもなし」 「ママ、それ助かる。沖田財閥トップといきなり会うのは緊張するし」 パパは再び心配顔で 「堅苦しくならないようにって言いながら振袖か?」 と聞いた。そりゃ、場は堅苦しくならないようにだけれど、失礼のない装いということよ。
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