chapter①

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週末、うちに帰って来た鈴にお見合い結婚の話をすると、キョトン顔から首を傾げ 「あ…沖田財閥って沖田船舶とか沖田商事とかの?」 納得顔になりながらも確かめてくる。パパも鈴も気持ちが表情に出るタイプだ。もちろん外では、仕事上差し支えのないようにしているけれどね。 「そう。その沖田」 「おめでとう、お姉ちゃん」 「ありがとう。でね、来週の土曜か日曜に彼と会うんだけど、鈴、来週も帰って来て。振袖着るから」 「うん、いいよ」 「髪も」 「どのパターンか決めておいてね。土曜だったら金曜日のうちに帰って来た方がいいよね?日にちが決まったら連絡くれる?」 「うん」 「じゃあ、来週ね」 帰って来たと思えばすぐに出て行く鈴は、小野田の祖父母がいるシニア向け高級分譲マンションを訪れるのだ。幼少期からこの家より、祖父母の家がお気に入りだった鈴はおじいちゃん子、おばあちゃん子だから、ここに帰って来ない週末にも祖父母には会いに行く。鈴のマンションからここまでは1時間ほどだけど、臨海公園に隣接する祖父母のマンションまでは30分だ。時々、祖父母が千葉京葉エリアの鈴のマンションへも行くらしい。 私は行かないけれど…以前、言葉遣いとか細かく言われたので苦手だから。ママもそう。小野田の祖父母が苦手だ。例えばこの間のイタリアンレストランで‘観劇で本当に偶然、沖田様と帰りに会ったの’ってママが言ってたけど、小野田のおばあちゃんなら‘沖田様とお会いしたの、よね?’って、きっと言う。
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