プロローグ*身代わり

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私達夫婦は最初から躓いていた。 『ダイヤモンドホテル銀座』 天井まで続く窓の向こうには広がる景色は幽玄壮美な日本庭園。 私、安達麻友(アダチマユ)は姉の安達知香(アダチチカ)と共に相馬蓮人(ソウマレント)さんを待っていた。 彼は姉の先日見合いした大手製薬会社『ソーマ』会長令息。 二人の見合いは父の事業が絡み、政略的な意味も含まれていた。 しかし、姉には長年交際していた恋人が居た。 その二人の仲を割って入ったような形での相馬さんとの見合い。 見合いはしたが、彼の印象は冷たく、彼自身も見合いに乗る気ではなかったようだ。 「すまない」 相馬さんが十分遅れで、私達の前に現れた。 彼は私達の前の椅子に腰を下ろした。 日曜日だと言うのに、紺のストライプ柄のスーツ姿にブリーフケースを持っていた。 休日出勤だろうか?
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