プロローグ*身代わり

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「畏まりました。ホットおひとつですね」 ウェイトレスは彼のオーダーを復唱して厨房に戻った。 「君は父親の事情を知らないのか?」 「知っています…」 「全てを知りながら…そんな失礼な事出来るのか?君達姉妹は俺を馬鹿にしてるのか?」 相馬さんが怒るのは御尤もだと私も思った。 「・・・貴方だって…私との見合いに全く乗る気ではなかったはず…」 「あぁー…そうだ・・・でも・・・俺にだって俺の事情があるんだ。俺は少ならからず…見合いに対して前向きに考えていた…」 「本当に申し訳ありません…」 頭を下げない姉に代わり、私が頭を下げた。 「話は分かった。君はさっさと消えろっ。知香さん。後は俺の妻となる妹さんと話を付ける」 「・・・」 姉は相馬さんの言葉にムッとして、何も言わず腰を上げて行ってしまった。
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