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解放軍と『銀鳥隊』の先陣が激突すると同時、紫色の空を鋭い稲妻が切り裂き、間断を置かずに轟音が響き渡った。雨足はあっという間に強まり、視界を悪くする。豪雨は飛行魔獣の翼を重くする。だが、地上から弓兵が狙いを定める事も難しくなるのだ。
グリフォンナイト達は槍を手に、急降下して敵を突いては再び上空に舞い上がる、一撃離脱の戦法を取る。だが、敵の弓部隊には視界の悪さに慣れた手練でもいるのか。一騎、また一騎と魔獣の翼を矢に貫かれ、くるくる回転しながら地上へ落ちてゆく。
「ザイード、ハルシア、メーレ……」
気さくに、しかし年若い隊長を馬鹿にする事無く接してきてくれた部下の命が、次々と失われてゆく。アルフォンスは墜とされた騎士達の名前を呟き、ぐっと奥歯を噛み締めた。
(すまない。だが、僕もすぐに後を追う)
ぎんと地上を睨みつけ、ロンギヌスを力強く握り締める。聖王の血筋に呼応するかのように、聖槍が青い光を放つ。後は射ち落とされるまで敵を屠るのみ。鐙でガルーダに合図を送れば、長年の友はこちらの意志を的確に受け取り、地上へ向けて急速に降下していった。
雨で狭まった視界に、ぎょっとした顔で弓を構える兵の姿が飛び込んでくる。右手を突き出せば、槍は容易く相手の鎧を貫通し、幻鳥も騎士も共に返り血を浴びる。
動かなくなった敵から槍を引き抜き、手元で柄を回転させる。雨の中を飛んできた矢が、次々と弾き飛ばされた。
再び空を稲妻が走り、一瞬、戦場を真昼のように照らし出す。修羅のごとくぎらぎらと目を輝かせ、また一人討たんとガルーダを急降下させたアルフォンスの眼前に。
「待って! 待ってください!」
武器を鞘に納めたまま、味方をかき分け飛び出してきた少女がいて、彼の意識は、一気に現実に引き戻された。水色がかった銀色の髪。翠緑の瞳。自分と同じ顔に目一杯の緊張を満たして、彼女は両の腕を広げる。
「シーバ!」少女のもとへ吶喊してゆく相棒に必死に呼びかけ、手綱を引きながら、己の右手にも制動をかける。「駄目だ、止まれシーバ!!」
がくん、と。つんのめりそうな衝撃が訪れる。自分の荒い呼吸だけがやけに大きく耳に届く。
ロンギヌスの穂先は、少女――エステルの眼前すれすれで、止まっていた。
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