目が見らんない

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 正体不明の易者は、眉間に皺寄せると、じーっと啓介を見つめる。 「なにに憑かれているかまではわからないんですが、たしかに取り憑かれているようで。とりあえずこの大幣(おおぬさ)で祈祷してみましょうか」  神社でよくみる祈祷に使う和紙のついた棒を取り出すと、右、左、右と振り、なにか呪文を唱え始めた。 「簡単に祓詞を唱えてみました。どうですか、なにか変化はありましたか」  啓介は驚いた。たしかに体からだるさが抜けた。 「本当だ、何だかラクになりました」と啓介。「すごいぞ由衣。この人、本物だ」  そう言うと由衣は黙ったまま。 「どうした由衣。いつもの軽口が少ないじゃん」
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