目が見らんない

9/17
前へ
/17ページ
次へ
「そんなんじゃないわよッ。ただ……」 「ただ……、なんだよ」  易者はコホン、と咳払いして言った。 「ちなみに執着はネガティブな感情だけじゃないですよ。ポジティブな感情でも執着心になります。たとえば恋とか」  恋ッ? 驚いた啓介が声を裏返してそう言うと、由衣はみるみる顔を紅くした。その紅さに、頭の先からボンッと爆発した音がきこえた気がした。 「だッ、だれがあんたに恋するワケッ? あんたの体質を心配してるだけ! ただの心配性なのよッ」 「そういえば、クラスの他の女子と話すとき、やけに体が重くなったりしたな」  由衣は啓介からスイッと目を逸らして言った。 「私じゃないわよ」
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加