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颯斗の仕事は深夜遅くまで続いた。ドラマ撮影のあとも、CM撮影に雑誌のインタビュー、ナレーションなど多忙を極めた。合間に何度も紗綾に連絡を取ろうとしたが、控え室に次から次へと挨拶をしに人が訪れたため結局連絡出来ないまま仕事を終えた。
時間は深夜二時を越えている。さすがに紗綾はもう寝ている時間だよなと思い、電話でなくメッセージをミュート送信することにした。
『お疲れ様。俺はいま終わったところ。紗綾の顔が見たいし声が聴きたいけど、今日は写真で我慢するよ。おやすみ』
スマホをリビングのテーブルの上に置き、シャワーを浴びに浴室へ向かうと、後ろから呼び止められるように音楽が鳴り響いた。紗綾からの着信音に、反射的に踵を返してスマホを手にした。
「紗綾?まだ起きてたの?」
「うん。ちょっと面白い本があって読み始めたら止まらなくて。そろそろ寝ようかなと思ったら颯斗からメッセージが来たから」
「そっか」
「うん。こんなに遅くまで大変ね。明日…って言うか今日だよね。何時から仕事なの?」
「五時半に佐々木さんが迎えに来るよ」
「え?五時半て、朝の?」
「うん。あと三時間半くらいか」
「ごめんなさい。颯斗の貴重な睡眠時間を邪魔しちゃって。じゃあ切るね」
「何言ってんの。紗綾の声を聞けない方がよっぽど睡眠不足より体に悪いから。俺にとってはいますごい貴重な時間過ごしてる感じだけど」
「颯斗…」
「嘘じゃない。大真面目。睡眠不足はどうにでもなるけど、紗綾不足はどうにもならないから深刻なんだ。だから、声だけでも聴けて良かった」
「私も。声聴けて嬉しい」
「うん。しばらくオフないからさ。出来る限り電話するよ」
「うん。ーーー私も」
「紗綾」
「何?」
「愛してる」
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