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電話越しでなく、目の前で言われたら何も考えずに颯斗の胸元へ間違いなく飛び込んでいたのにと紗綾は思った。大好きな人からもらえる最上級の愛の言葉が、こんなにも嬉しいものだなんて。恋愛小説だって沢山読んできたけれど、あくまで創作の世界で、現実はそんなに甘くないだろうと思っていたのに、蓋を開けてみれば颯斗が紗綾に見せる世界はどれも小説なんかよりもずっとずっと甘すぎて溶けてしまいそうになる。颯斗にも、こんな幸せをあげたい。お互い一方通行じゃなく、せっかく二人で恋愛しているんだから。
「颯斗」
「うん」
「私もね。ーーー私も、愛してる」
「うん」
「それからね」
「うん」
「颯斗に愛されて、私、すごく幸せ」
紗綾から飛び込んできた思いもよらなかった
言葉に、一瞬目を見開いた颯斗はキツく目を綴じ唇を噛みしめた。自分の方がずっと紗綾を求めていると思っていたのに、同じ気持ちを返してくれた。今まで付き合った女性たちからは一方的に思いを寄せられてきたが、その半分程度しか返せていなかった自覚はある。もしいま紗綾に同じことをされたら自分がどんな気持ちになるか。今までの自分がどれだけ酷いことをしてきたのか颯斗は初めて自覚した。
「紗綾はいつも俺に大切なことを気づかせてくれるんだな」
「え?いま何て言ったの?」
「うん。紗綾がいなかったら俺きっと最低な人間になってたなと思って」
「そんなはずないよ。颯斗はすごく温かい人だから。優しいし、人の細かいところまでよく見てて気付けるし。うん。だから絶対、そんなことにはならない。大丈夫」
「そっか。ありがとう」
「うん」
それは紗綾に対してだけなんだけどね。という思いを颯斗は静かに胸の奥にしまい、電話を切った。
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